鮫洲さめず)” の例文
土地の大地主で、数多たくさんの借家を持ち、それで、住宅すまい向前むこうに酒や醤油の店を持っている広栄の家は、鮫洲さめず大尽だいじんとして通っていた。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「金さんの家は……。なんでも鮫洲さめずを出はずれて右の方へはいった畑のなかに、古い家が二軒ある。一軒は空家あきやで、その隣りが金さんの家だそうですよ」
半七捕物帳:51 大森の鶏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
鮫洲さめずにいるのでございますよ。でも……」と鴫丸は後をつづけた。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「へん、ここをどこだ」声をおとして、「ここは鮫洲さめずのお大尽だいじんのおやしきさ、お邸と知って、奥さまをもらいに来てるのだが、てめえはなんだ」
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そこで、かの友蔵と幸吉も絶えず新しいものに眼をつけていると、嘉永四年四月十一日の朝、荏原郡大井村、すなわち今の品川区鮫洲さめずの海岸に一匹の鯨が流れ着いた。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「おい、何時いつまで黙ってるのだ、しびれがきれるぜ、御主人、鮫洲さめず大尽だいじん君、女をくれるか、いやか、返事をしてくれないのか」
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
鮫洲さめずで、鮫洲から八幡さまのあたりまでは、農家や漁師町が続いていますが、それから大森までは人家が途切れて、一方は海、いわゆる安房上総をひと目に見晴らすことになる訳で
半七捕物帳:52 妖狐伝 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
見送りに来た多吉と幸次郎に品川で別れて、半七らは鮫洲さめずから駕籠に乗った。予定の通りに神奈川の宿しゅくに泊まって、あくる十五日に横浜にはいると、きょうは朝から晴れて残暑が強かった。
半七捕物帳:59 蟹のお角 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「はい。鮫洲さめずまでまいります。」
経帷子の秘密 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)