あざむ)” の例文
日吉は、うまく彼をあざむいたつもりでいたが、十兵衛の叡智えいちの眼は、何もかもぬいていることを、明らかに示していた。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幼少、ご恩顧をこうむってからのご奉公も勉学も、決して、君をあざむかんなどと思ってして来たわけでは毛頭ありません。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼があざむくのではなく、こちらの眼が曇っている罪ともいえよう。——真を観るむずかしさ。直指人心。これができれば、もう或る所までその人間は達している。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「では、初めからご両親やら上杉殿をも、おあざむきのお腹だったので」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)