馴染客なじみきゃく)” の例文
十月初旬は、いつも柳橋の霜枯れで、女将の留守中はことに馴染客なじみきゃくでもよほど親しい客でなければ上げなかったので、その間は、奉公人にも、骨休みだった。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
土地の料亭りょうていむか、家で呑むかして、苦悶くもんを酒に紛らせているのだったが、お竹の芸者時代の馴染客なじみきゃくのことでは、銀子たちも途方に暮れるほどの喧嘩けんかがはじまり
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
三沢は病院の二階に「あの女」の馴染客なじみきゃくがあって、それが「お前胃のため、わしゃ腸のため、共に苦しむ酒のため」という都々逸どどいつ紙片かみぎれへ書いて、あの女の所へ届けた上
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
又情事関係も、普通の馴染客なじみきゃく以上のものはない様に思われるということでした。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)