ある時馬が柴橋から落ちて死んだから馬ころばし、その馬の供養くよう馬頭観世音ばとうかんぜおんをまつると観音岩、そこに行者ぎょうじゃでもいれば行者谷というような名が附く。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
突如私の目前に取り出されたものは馬頭観世音ばとうかんぜおんの一躰でした。それを眺めた時、私の呼吸はしばし奪われました。私は再び上人の異数な表現に逢着ほうちゃくしたのです。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「早発性痴呆ちほうと云うやつですね。僕はあいつを見る度に気味が悪くってたまりません。あいつはこの間もどう云う量見か、馬頭観世音ばとうかんぜおんの前にお時宜じぎをしていました」
歯車 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)