餌取えとり)” の例文
しかもそのエタと云う語の本来の意味を説明して、「餌取えとり」ということだと云っているのである。エトリが訛ってエタとなったというのである。
賤民概説 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
みよしで、朝食の支度をしていた餌取えとりの平吉がまっさきに見つけた。
顎十郎捕物帳:13 遠島船 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
エタとは元来「餌取えとり」ということで、鷹に喰わせる餌を取ることを職としたもの、すなわち後世の「餌差えさし」というと同様の職人のことでありました。
餌取えとりを畜生か何ぞの様に忌み嫌うた仏徒の目からも、餌取法師が念仏の功徳によって仏果を得た事を認めておった当世に、人そのものが穢れておって
「エタ」名義考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
この際においてただ屠者すなわち餌取えとりの輩のみは、その殺生を常習とする事から、相変らず旧来の習慣を墨守して、これを喰うことを避けなかったが為に
牛捨場馬捨場 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
普通に穢多は屠者で、屠者の事を古え餌取えとりと云い、エタという名もその「エトリ」の転訛だと言っております。
餌取えとりすなわち屠者の如き肉食殺生常習者が、次第に人間仲間に置かれなくなったのも実際やむをえなかった。
賤民概説 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
それで時には餌取えとり法師とも呼ばれ、前記の如く真言宗や天台宗の如き貴族宗では、非常にこれを嫌って寄せつけなかったものであったが、しかしまた一方では
賤民概説 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
これらの島や鴨河原へ、餌取えとり余戸あまべの本職を失ったものが流れ込んで、所謂河原者をなし、その或る者はエタと呼ばれ、或る者は天部あまべと呼ばるるに至ったものではあるまいか。
エタ源流考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
そしてこの屠者には、もとの猪飼いかいや、餌取えとりや、猟師の或るものが成って、同時に彼らの或る者は、皮細工人かわざいくにんともなったのでありましょう。これからだんだん屠者が賤しまれ出す。
しかし餌取えとりはもと屠者でなく、屠者はまた穢多の全部ではありません。餌取とはもと主鷹司たかづかさの鷹や犬に喰わせる餌を取ることを職とする一つの雑戸ざっこで、後で云えば餌差えざしに当ります。
賤者の名称が同じ程度の他のものに移り行く事は、もと主鷹司の雑戸なる餌取えとりの名が、エタと訛って浄人きよめ・河原者等にも及び、はては死牛馬取扱業者にのみ限られる様になった例もある。
4 エタと餌取えとり
エタ源流考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)