飯場はんば)” の例文
こう考えながら半丁ほどの路を降りて飯場はんばへ帰って、二階へ上がった。上がると案のじょう大勢囲炉裏いろりそばに待ち構えている。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
背から受ける夕日に、鶴尖つるはしやスコップをかついでいる姿が前の方に長く影をひいた。ちょうど飯場はんばへつく山を一つ廻りかけた時、後から馬のひづめの音が聞えた。
人を殺す犬 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
その足で飯場はんばから酒を二升ばかりげて来て、取りあえずひやのまま茶碗を添えて皆の前に出した。すると又、それに連れて済まないというので、手に手に五合なり一升なり提げて来る者が出て来る。
斜坑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「そればかりじゃごぜえません。飯場はんばの女達も逃げかけやした」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そう云う訳で飯場はんばの意味は今もって分らないが、とにかくがけの下に散在している長屋をすものと思えばいい。その長屋へようやく到着した。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
飯場はんばを出て二丁ばかり行くと、すぐ道端みちばたにある。木造ではあるがなかなか立派な建築で、広さもかなりだけに、獰猛組どうもうぐみとはまるで不釣合である。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)