飢餓うえ)” の例文
こうして合戦が長びくにつれて国内の飢餓うえは日一日と、益〻暴威をたくましゅうし、とうとう町々辻々に餓莩がひょう横仆よこたわる有様となった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かんかん虫のトム公は、領土の人民を見廻るように、時々、自分の住んでいるイロハ長屋の飢餓うえをさがし歩いた。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここは伊那家の管領地の高遠城の城下町で、飢餓うえに迫った人々が、大地をのたうち廻わりながら口々にののしり騒いでいる。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
はげしい飢餓うえは往々にして酒に酔ったような状態を其人に起こさせるものであるが、すくなくも彼には左様そうであった。
人間製造 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
飢餓うえが目前に迫っている。木の根木の皮草のくき松笠までも食い尽くした。伊那の高遠の十里四方には生色あるものは一つもない! ——怨めしいのは伊那のご領主伊那五郎盛常殿じゃ
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)