飛耳張目ひじちょうもく)” の例文
おれには、関東一円、江戸の内外、いたるところに飛耳張目ひじちょうもくの手下があるから、きッとどいつか見つけるだろう。その時は、いつでもこッちから出張ってやる
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
殊に新奇を好んで飛耳張目ひじちょうもくする俳諧者流の手にかからぬはずはなかろう。阿蘭陀西鶴に夾竹桃を読み込んだ一句でもあるか、どうだろう。そんな方面にも鶴見の見聞の領域は狭い。
逢うのはみんな日本左衛門の手下、この甲府に入りこんで、飛耳張目ひじちょうもくとなって町をうろついている者達です。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
原士のおさ龍耳りゅうじ老人とおっしゃる方の飛耳張目ひじちょうもくに使われまする者で、永年の間、私のいいつけられていた役目は、関屋孫兵衛の頭巾を監視することでございました。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
先に黄信が劉高の手に乗って宋江と花栄を檻車に封じたことも、また何から何まですべての予察は、みな彼ら特有なこの“飛耳張目ひじちょうもく”の探りによっていたのである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
清盛入道の飛耳張目ひじちょうもく——六波羅童ろくはらわっぱと呼んで市人まちびとに恐れられている赤い直垂ひたたれを着た十四、五歳の少年らが、なにか、平相国へいしょうこくの悪口でも演じているのではないかと、こましゃくれた眼を
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その宋公明の消息如何いかんは、以来、ここの仲間には忘れえない関心事となっていた。もちろん、彼らはその手先を使って、たえずこうを渡らせ、その飛耳張目ひじちょうもくを八方へくばらせてもいた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
飛耳張目ひじちょうもくの稼業がらとはいえ、どうしてそこまで仔細に釘勘の探りが早くついていたかといえば、手懸りは例の切支丹屋敷——官庫荒しの一件が逐一町奉行所の手へ移されたがためでした。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)