陰日向かげひなた)” の例文
何となく白ッぽい林檎りんごの葉や、紅味を含んだ桜や、淡々しい青桐あおぎりなどが、校舎の白壁に映り合って、楽しい陰日向かげひなたを作っている。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
少なくとも打ち明けるべき場合に打ちあけるべき相手になら自分は決して陰日向かげひなたを好む男ではない。——と裕佐は思っていた。
山の姿は、その線と陰日向かげひなたとばかりでなく、色彩にかけても、日が西に回るとすばらしい魔術のような不思議を現わした。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
全く従順で、わしが知っている娘のなかで陰日向かげひなたのない忠実さを示したものは奈世をいて他には無かった。
(新字新仮名) / 富田常雄(著)
僕の家にしてもたまにお父さんのいない時にはお母さんは子供が泣いても知らん顔をして雑誌を読んでいる。これは決して横着でも陰日向かげひなたでもない。細君当然の権利だ。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
目に見えて陰日向かげひなたがひどくなったから越してきた日に初めてミッチリと油を絞ってやったら、不貞腐れてすぐその晩のうち、小勇は飛びだしていってしまったのだった。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
つやにも葉子の心持ちはすぐ通じたらしく、つやはこの家のために陰日向かげひなたなくせっせと働いたのだった。けれども新聞の小さな出来事一つが葉子を不安にしてしまった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)