里昂リヨン)” の例文
巴黎パリなる里昂リヨン停車場を発したる地中海行特急ペ・エール・エーム・エクスプレッス第七九五号列車は、蒼味をおびた夜空に金色の火花を吹き散らしながら、いまや
ここに於てか思わざりき往年里昂リヨンにて購いたるステッキ今復外出の伴侶となるを。追懐の情禁ずべからず。為めに此を記す。
偏奇館漫録 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
彼は昼眩ひるまばゆき新調の三枚襲さんまいがさねを着飾りてその最もちんと為る里昂リヨン製の白の透織すかしおり絹領巻きぬえりまき右手めて引摳ひきつくろひ、左に宮の酌を受けながら
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
同書の原稿は明治四十年の冬、僕が仏蘭西にいた時里昂リヨンの下宿から木曜会に宛てて郵送したもので翌年八月僕のまだ帰朝せざるに先立って、既に刊行せられていた。
申訳 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
然るに今や老年と疾病とはあらゆる希望と気魄とをにじろうとしている。此の時に当って、かつて夜々紐育ニューヨーク巴里パリにまた里昂リヨンの劇場に聞き馴れた音楽を、偶然二十年の後、本国の都に聴く。
帝国劇場のオペラ (新字新仮名) / 永井荷風(著)