這入ハヒ)” の例文
たゞ一刻ばかり前、這入ハヒりの戸を揺つた物音があつた。一度 二度 三度。更に数度。音は次第に激しくなつて行つた。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
踏み越えても這入ハヒサウに見える石垣だが、大昔カハされた誓ひで、目に見えぬ鬼神モノから、人間に到るまで、あれが形だけでもある限り、入りこまぬ事になつてゐる。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
郎女たちの居る女部屋ヲンナベヤまでも、何時イツもづか/″\這入ハヒつて来て、ハバカりなく古物語りを語つた、あの中臣志斐媼ナカトミノシヒノオムナ——。あれと、おなじ表情をして居る。其も、モツトモであつた。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)