迂散臭うさんくさ)” の例文
「なんだか、変だよ。みんなあたしを迂散臭うさんくさい眼で見てるんだね。やつぱり帰つて来るんぢやなかつた……」
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
恐らく誰もまだ気づいてゐないうちに、彼はその人の持ち上げにかゝつた所に迂散臭うさんくさいものを嗅ぎつけた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
女は迂散臭うさんくささうに、また声をかけたものの何者であるかを探すやうに、疑深うたぐりぶかい眼をかれの方に向けた。
波の音 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
坊さんが通りかかると吃驚びっくりして迂散臭うさんくさそうな眼付をしたのもこうした型の人間に通有な油断のない周当さを裏書するものである。正面の大戸がフランボー自身によって開かれた。
やや少時しばらくすると戻って来て、こんどは玄関とは反対の裏口から庭へ廻った。日はすっかり暮れてしまって四辺はもう暗かった。大きな番犬がどこからか出て来て、迂散臭うさんくさそうに二人の後をついて来る。
情鬼 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
「お前さん。何用です」婆さんは迂散臭うさんくさそうにいった。
日蔭の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)