軒蛇腹のきじゃばら)” の例文
破風はふは正面に向いていて、家の他の部分全体ほどの大きさの軒蛇腹のきじゃばらのきと表口との上にある。窓は狭くて奥深く、窓ガラスが非常に小さくて窓枠がたくさんある。
鐘塔の悪魔 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
闇の中で例の鬘を冠り、外に出て、立木を伝って洋館の軒蛇腹のきじゃばらのぼり、寝室の窓の外へ廻って行って、そこのブラインドの隙間から、ソッと中を覗いたのであります。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
一寸した硝子ガラス窓の光とか、建物の軒蛇腹のきじゃばらの影とかに、美しい感じを見出すことが、まあ、僕などはこんなところにも都会らしい美しさを感じなければ外に安住するところはない。
東京に生れて (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
午後の日光が窓々の閉った建物の真正面を照し、軒蛇腹のきじゃばらのところの厚い金商牌きんかんばんを埃っぽく輝かせている。歩道の赤白縞の日除けの下を色彩の強い服装をした女が靴の留金をかがやかせて歩いて行く。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
春木、牛丸の二少年は人眼をさけるために、窓から外へでて、軒蛇腹のきじゃばらをつたって非常梯子にとびうつった。それはかなり冒険だったけれど、身の軽い二少年には、大してむずかしい仕事でもなかった。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その影に——その建築に——そのつたのまつわった荘重な軒蛇腹のきじゃばらに、前に千たびもディ・メントーニ侯爵夫人の感歎しなかったものがあるなどというはずがあったろうか? 否!——誰か