贔顧びいき)” の例文
牛込の下宿を経営する市会議員夫婦と言い、この榊と言い、吉本さん贔顧びいきの人達がいろいろな方面に多いことは捨吉にも想像がついた。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
彼の通り弱いものだから、其丈それだけ哀憐あはれみも増すのだらうと思ふね。家内はまた弟の進贔顧びいき。何ぞといふと、省吾の方を邪魔にして、無暗むやみに叱るやうなことを為る。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
のみならず、下手な吉本さん贔顧びいきの多いことが、心あるものに一種の反感をさえ引起させた。こういうことを岡見は眼中に置かない訳にはいかなかったらしい。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
文平贔顧びいきの校長は、丑松の組に勝たせたくないと思ふかして、熱心になつて窓からながめて居た。丁度午後の日を背後うしろにしたので、位置の利は始めから文平の組の方にあつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)