贅美ぜいび)” の例文
けれど、徐庶の母は、贅美ぜいびをきらい、家族にも遠慮がちに見えるので、別に近くの閑静な一屋へ移して、安らかに住まわせた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひいては、世をあげて、贅美ぜいび逸楽いつらく坩堝るつぼと化し、物はあがり貨幣価値は低くなった。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
氏真は小禽ことりが好きだった。名鳥を求めて彼に贈れば、他愛なくよろこぶことを知っているので、都の公卿くげからも、贅美ぜいびな鳥籠と名禽は、居ながらに、屋形のうちの彼の住居すまいの坪には集まった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
東山殿の贅美ぜいびと退屈の果てから生れた貴族趣味のものだったのが、いつのまにか、その東山殿の足利あしかが文化を、過去のからとして、次の生々いきいきと伸びかけている草民そうみんのうちへ、極めて、平民的に
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところが、そんな単純な道理さえ中世から現代までも、社会史的には世界中ちっとも分かっていないらしい。王位、権力、容儀、贅美ぜいびといったものへの憧憬と争奪が、血の歴史を繰返してきた。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)