たくわえ)” の例文
五百は東京に来てから早く一戸を構えたいと思っていたが、現金のたくわえは殆ど尽きていたので、奈何いかんともすることが出来なかった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
その間の困窮はたとふるにものなく一粒の米、一銭のたくわえだになくて食はず飲まずに一日を送りしことも一、二度はありきとぞ。その他は推して知るべし。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
此頃は町役所のたくわえまでを取り寄せて
しかしF君が現に一銭のたくわえもなくて、私をたよって来たとすると、前に私を讃めたのが、買被りでなくて、世辞ではあるまいか、阿諛あゆではあるまいかと疑われる。
二人の友 (新字新仮名) / 森鴎外(著)