負傷いたで)” の例文
神様は此の罪の負傷いたで深い病弱の私にも何事か為させやうとして居給ふのであらうと思へば感謝して日を送ってゐます。
手紙 (新字旧仮名) / 知里幸恵(著)
そうしてそれでも辛うじて広い河原を向こうへ越すと暮れせまって来た薄闇の中へ負傷いたでの姿を掻き消した。
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
強者にあっては、苦悶くもんも、憐憫れんびんも、絶望も、回復できない亡失の痛切な負傷いたでも、死のあらゆる苦痛も、猛烈な拍車で彼らの脇腹わきばらをこすりながら、この生の喜びを刺激し煽動せんどうするばかりである。
よこたはる負傷いたでの兵の
寂寞 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
(この負傷いたででは、どうせ命はない。では、せめて、数々の思い出と、数々の罪悪とを残している道了塚で、息を引き取ろう。……東十郎への罪滅しにもなれば、懺悔ざんげにもなる)
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)