詭謀きぼう)” の例文
人は詭謀きぼう反間はんかんの中に生きているので、要心すぎて疑いぶかく、妻にさえ油断せず、骨肉の間さえ破壊されかけた一頃ひところの——社会悪はなお人間のなかによどんでいた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この愉快、この欲望は、自然が人間に繁殖をはからせる詭謀きぼうである、である。こんな餌を与えないでも、繁殖に差支さしつかえのないのは、下等な生物である。醒めた意識を有せない生物であると云っている。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「その儀は、秘中の秘ゆえ、書中にはお認めございますまいが、詭謀きぼうを用いて、木村隼人佑を殺し、さそくに旗をかえして、同勢一散に、柴田方へ馳せ参ぜんとのお確約にございます」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だまれッ、家臣の分際ぶんざいをもって、主人の意向もうかがわずに主人の客を追いかえす法やある。すでに落城したも同様なこの城を落すために、わざわざ手間ひまかけて、説客に来たり詭謀きぼう
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)