蓮葉はちすば)” の例文
りやうじゆせんの御池の蓮葉はちすばは、およそ一枚が二間四方ほどひらきて、此かほる風心よく、此葉の上に昼寝して涼む人あると語りたまへば、信長笑わせ給へば、云々
西鶴と科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
主客の列は、左右に椅子いすを並べて分れた。捲きかかげた珠簾しゅれんの下から、後亭の池園ちえんを見れば、蓮葉はちすばのゆらぎ、芙蓉ふようの色香、ここも山寨の内かと怪しまれるほどである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
されば徃時むかしは朕とても人をば責めず身を責めて、仏に誓ひ世に誓ひ、おのれが業をあさましく拙かりしと悔い歎きて、心の水の浅ければ胸の蓮葉はちすばいつしかと開けんことは難けれど
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
蓮葉はちすばを同じうてなと契りおきて露の分かるる今日けふぞ悲しき
源氏物語:38 鈴虫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ありし世をしのぶにゆかし亡き人の魂の行方と蓮葉はちすばを見て
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
子にも妻にもいと酷き鬼のやうなることなりけり、爽快いさぎよきには似たれども自己おのれ一人を蓮葉はちすばの清きに置かん其為に、人の憂きめに眼も遣らず人の辛きに耳も仮さず、世を捨てたればと一口に
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)