蒼白あおざめ)” の例文
平田は驚くほど蒼白あおざめた顔をして、「遅くなッた、遅くなッた」と、独語ひとりごとのように言ッて、忙がしそうに歩き出した。足には上草履を忘れていた。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
このあかりで、貞造の顔は、活きてまなこを開いたかと、蒼白あおざめた鼻も見えたが、松明たいまつのようにひらひらと燃え上る、夫人の裾の手拭を、炎ながら引掴ひッつかんで、土間へ叩き出した早瀬が、一大事の声を絞って
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
吉里は用事をつけてここ十日ばかり店を退いているのである。病気ではないが、頬にせが見えるのに、化粧みじまいをしないので、顔の生地は荒れ色は蒼白あおざめている。髪も櫛巻くしまきにしてきれも掛けずにいる。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)