はな)” の例文
いくらシッカリ抱きしめても……、雨のような、弾丸のような、激しい接吻に、その匂うようなはなの顔が、ベトベトと濡れ果てても……。
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
方々を歩いてみると、往々このイチハツを藁屋根の棟に密に列植してあるのを見かけるが、その紫はなを飜えす花時にはすこぶる風流な光景を見せている。
植物一日一題 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
鳥居をくぐると染井吉野や枝垂桜の交った一町余りの桜並木が八分の開花を見せて、やや紅の濃いはなからは、宵に降った雨の名残の雫がはらはらと滴っている。
春の大方山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
優に愛しいこのフェアリーランドの音情は、まことにユニックな青白いはなびらの光沢に満ちてゐる。
測量船拾遺 (新字旧仮名) / 三好達治(著)
湿った黒い土の上に散乱した花枝や、こぼれた桃のはなを見ると、千世ははだしでそこへとびだしてゆき、「誰がこんなことを」と云いながら、僅かに花の残っている桃の枝を拾おうとした。
四日のあやめ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
芳葩及外仮 かんばしきはなとも外仮げけなり
向嶋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)