萱葺かやぶ)” の例文
円錐形の萱葺かやぶき屋根の上へ這い上って居る蔓薔薇は夏から秋に移ると直ぐに寒くなる英国の気候にめげてまばらに紅白の花を残して居たが
ガルスワーシーの家 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そしてその遥かの奥に、楼門とは似ても似つかぬ萱葺かやぶきの小さな本堂が、真っ闇な老杉に囲まれて、昔に変らぬ陰森さを漂わせていました。
仁王門 (新字新仮名) / 橘外男(著)
小暗い細みちを突っきると、森かげに生け垣をめぐらしたささやかな萱葺かやぶき屋根が見えてきた。老士がひとり、戸口に立ってこっちへ小手をかざしている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
家をぜひとも萱葺かやぶきにしておりたい人は、自分の持地もちじのなかに生やして置けばよいのだが、それをすることは大へんな地面のついえだから、やはり多くの仲間のユイによって
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
棟が低く、萱葺かやぶきの朽ちかかったような屋根に手が届くくらいであった。
ちくしょう谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
どうせわら萱葺かやぶき屋根の、大きかったか小さかったかそこまでは記憶もありませんが、ただ苔の生えた高い石段を登ったところに、太い柱の山門がそびえ立って
仁王門 (新字新仮名) / 橘外男(著)