茹蛸ゆでだこ)” の例文
橄欖寺の先々代は学識秀でた老僧であつたが、酒と茹蛸ゆでだこが好物で、本堂に賭博を開いては文字通り寺銭を稼いで一酔の資とするのが趣味であつた。
黒谷村 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
(あ、困った)そのとき、かわやの扉が、はげしく鳴りひびき、中から旦那様が、茹蛸ゆでだこのような頭をふりたてて出てきた。
什器破壊業事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
やがて主人はまくりをしながら茹蛸ゆでだこのようになって帰って来た。縁に花蓙はなございてある、提煙草盆さげたばこぼんが出ている。
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
雨のため、部屋の窓が全部しめ切られて在るので、蒸し暑く、私は酒が全身に廻って、ふうふう言い、私の顔は、茹蛸ゆでだこのように見えたであろう。いけない。
善蔵を思う (新字新仮名) / 太宰治(著)
茹蛸ゆでだこのように真っ赤になって、熟柿臭じゅくしくさい息をフウフウ吐いている丑松だったのです。