茶飯事さはんじ)” の例文
チェスタートンが、「いかなる革命家でも家常茶飯事さはんじについては、少しも革命家らしくなく、尋常人と異らない尋常なことをしている」
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
フランスの都の裏町を漫歩しつつその町の屋根の下に起こりつつあるであろうところの尋常茶飯事さはんじを見物してあるくのである。
映画雑感(Ⅰ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
親類縁者といえども信用できず、又、信用しておらず、常時八方に間者かんじゃを派し、秘密外交、術策、陰謀は日常茶飯事さはんじだ。
家康 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
科学知識の普及も結構ではあるが、原子や分子を日常茶飯事さはんじの如く口にするだけでは無意味である。
簪を挿した蛇 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
しかし獣類の世界では……おお、そうだ、獣類の世界では、そんな事は日常茶飯事さはんじだ。本能の命ずるままに、何をしでかすかしれたものではない。この犯人は、きっと、あいつに違いない。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
また石太郎は、なんどむちでこづかれたとて、いっこう骨身ほねみにこたえない。まるで日常茶飯事さはんじのようにこころえているのだから、いささかも、かれにすまないと思う必要はないわけである。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
普通の意味でいわゆるあたまの悪い人にでも容易にわかったと思われるような尋常茶飯事さはんじの中に、何かしら不可解な疑点を認めそうしてその闡明せんめいに苦吟するということが
科学者とあたま (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)