胆煎きもい)” の例文
こう云われて、彼も早速其の気になり、旦那の胆煎きもいりで到頭柳橋の太鼓持ちに弟子入りをしました。三平さんぺいと云う名は、其の時師匠から貰ったのです。
幇間 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
小原という男なども、その胆煎きもいりの一人であった。お庄を見に、小原と一緒に花など引きに来る男も一人二人あった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ちょうど村では金兵衛の胆煎きもいりで、前の年の十月あたりに新築の舞台普請をほぼ終わっていた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あとに残されたのは町内の薪屋まきやの亭主五兵衛と小間物屋の亭主伊助で、この二人は信者のうちの有力者と見なされ、いわゆる講親こうおやとか先達せんだつとかいう格で万事の胆煎きもいりをしていたのである。
半七捕物帳:21 蝶合戦 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「なんだってすばしっこくって、ちっとも眼がはなせねえ、寝たかと思ってちょっと立ったら、いつのまにかもう土間へおりて下駄をしゃぶってるだ、ほんとにこの子には胆煎きもいっちまうよ」
桑の木物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
お高のことで木場の甚と相識しりあいになった日本一太郎は、木場の甚の胆煎きもいりで、ここの境内の祭の前後五日間、自分が太夫になって手妻だけの小屋を張り通すことになって、大変な意気込みだ。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)