経緯けいい)” の例文
旧字:經緯
もちろん当事者の名まえなど決して書かずただ一種変った自分の心理を叙述する材料としてかなり経緯けいいをはっきり書いた。
鶴は病みき (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
いたましい。とも思い遣るのだった。きょうまでの経緯けいいを何もかも慈円は知っている。そして、誰よりも案じている。誰よりも綽空の大成を祈っている。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どういう経緯けいいがあったか知らないが、法廷では、最後まで手帳にあった十人に限定されたのは事実である。
青髯二百八十三人の妻 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
伯姫から云えば、現衛侯ちょうおい、位を窺う前太子は弟で、親しさに変りはないはずだが、愛憎あいぞうと利慾との複雑な経緯けいいがあって、妙に弟のためばかりを計ろうとする。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)