紅殼べにがら)” の例文
新字:紅殻
「つまらねえ事を言ふな——斯うつと、あの浪人者が手習師匠でないとすると、あの袖の赤いのは朱ぢやなくて紅殼べにがらだ」
青き焔の如き波に洗はれたる低き岩根には、紅殼べにがら毛星族まうせいぞく(クリノイデア)いとしげく着きたるが、その紅の色は水をかぶりて愈〻紅に、岩石の波に觸れて血を流せるかと疑はる。
天井の低い二階も階下したも、おもてに向いた方はすべて格子造で、それを紅殼べにがらで塗り、入口のくゞりの中は土間になつてゐて、裏口迄つきぬけてゐるといつたやうな古風なものだつた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
紅殼べにがらや、生死殼なましにがら
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
それにつけても、こんなに荒れたまゝで大川屋さんに差上げては、いくら何でもお氣の毒だからと申して、玉垣と鳥居を塗つたついでに、木連格子きつれがうしだけは紅殼べにがらで塗つて置きました。
徳藏稻荷の木連格子きつれがうしは、紅殼べにがらを塗つたばかりだつて、和泉屋の亭主は言つたね、——あの拜殿の鈴をむしり取るのは、賽錢箱さいせんばこの上に登らなきやならねえが、足元が惡いから、鈴を取るとグラリと行く