穴守あなもり)” の例文
ふだん半病人の生活をつづけて居る。去年の一月の中頃であつた。種田君と私の家族とが穴守あなもりへ遊びに行つて一泊して夕方帰途についた。
二黒の巳 (新字旧仮名) / 平出修(著)
「おまえは、ほんとにひどい人ですね。穴守あなもりの茶屋へ私を待ち呆けさせたまま、聞けばあの時あのあしで、上方かみがたへのぼってしまったのだということじゃありませんか」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
羽田の穴守あなもり恵方詣えほうまいりに行き、どうかした拍子に、銀子は春次と一緒に乗っている伊沢の車に割り込み、染福が一人乗りおくれてまごまごしているのを見たが、穴守へついてからも
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「中は恐ろしく狹い上に、こけで一パイさ、千兩箱なんか隱せる場所ぢやねエ。それに、穴守あなもりのお狐もさう言つて居たよ。生れてまだ千兩箱と鼠の天プラにはお目に掛つたことはないつてね」
母と私達兄弟と幼い弟の子守とで、穴守あなもりへ潮干狩に行ったことがあった。母と弟と子守は休憩所に残っていて、兄と私だけが海に入った。私はその遠浅の海岸を、いつかかなり沖の方まで出て行った。
生い立ちの記 (新字新仮名) / 小山清(著)
羽田穴守あなもり海岸吟行。
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
それまでいて、すべてに安心すると、お菊ちゃんは、これから夜の明け方に、お大師様へ詣って、穴守あなもりで朝飯をたべて、ゆっくり一昼寝した上、陸道おかみちから江戸へ帰ると云った。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「中は恐ろしく狭い上に、こけで一パイさ、千両箱なんか隠せる場所じゃねエ。それに、穴守あなもりのお狐もそう言っていたよ。生れてまだ千両箱と鼠の天プラにはお目に掛ったことはないってね」