稲葉屋いなばや)” の例文
旧字:稻葉屋
落合に住む稲葉屋いなばや勝重かつしげはすでに明治十七年の三月あたりからその事のあるのを知り、あの半蔵が跡目相続の宗太夫婦とも別居して
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
半蔵には新たに一人ひとりの弟子ができて、今は住み込みでここ本陣に来ていることも香蔵をよろこばせた。隣宿落合の稲葉屋いなばや子息むすこ、林勝重かつしげというのがその少年の名だ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
という声がして、勝重がまず稲葉屋いなばやの裏口から飛んで来る。奥深い入り口の土間のところで、半蔵も平兵衛も旅の草鞋わらじひもをとき、休息の時を送らせてもらうことにした。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「どうも、えらいことをやってくれましたよ。わたしも落合の稲葉屋いなばやへ寄って、あそこで大体の様子を聞いて来ました。伊之助さんも中津川までかけつけてくれたそうですね。」
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
景蔵と香蔵とがわざわざ名ざしで中津川から落合の稲葉屋いなばやまで呼び出され、浪士の一人なる横田東四郎から渋紙包みにした首級の埋葬方を依頼された時のことも、まだ二人の記憶に生々なまなましい。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)