稗田阿礼ひえだのあれ)” の例文
それがまた『古事記』が精彩ある神代の記録を、世に留めた理由でもあるので、現にアイヌの中の稗田阿礼ひえだのあれなどは、今だって文字を利用しようという念はないのである。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
『古事記』は天武てんむ天皇が稗田阿礼ひえだのあれ伝誦でんしょうさせられたのを太安万侶おおのやすまろが書いたものであります。
古代国語の音韻に就いて (新字新仮名) / 橋本進吉(著)
滑稽こっけいな例をあげれば稗田阿礼ひえだのあれの名が「博覧強記の人」の意味にこじつけられたりした。
『古事記』の記載の内容を検討すれば勿論のこと、そうするまでもなく、序文を誠実に読んだだけでも、稗田阿礼ひえだのあれは直接に書物を取扱ったものであることが明白に知られるはずである。
又和銅四年には、勅命を承けて太安万侶おほのやすまろが、稗田阿礼ひえだのあれの口授に依つて、古事記を筆録し、翌年これを完成してたてまつり、又元正げんしやう天皇の御代には、舎人親王とねりしんわうが勅を奉じて、日本書紀を撰せられてゐる。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
天武天皇の勅語を稗田阿礼ひえだのあれが誦したものを太安万侶おおのやすまろが筆録したもので、その言語は幾分古い時代のものであろうから、これに八十八音を区別したのは、奈良朝以前の音韻状態を伝えるもので
国語音韻の変遷 (新字新仮名) / 橋本進吉(著)