磅礴ぼうはく)” の例文
彼は戯作げさくの価値を否定して「勧懲かんちょうの具」と称しながら、常に彼のうちに磅礴ぼうはくする芸術的感興に遭遇すると、たちまち不安を感じ出した。
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
四大空に帰するか、魂魄こんぱく故郷に還るか、雄心滅せずしてとこしえに天地の間に磅礴ぼうはくたるか。自分はこの迷いに確答を与うべき科学を持っている。
もはや当時の記憶は磅礴ぼうはくとして、ただ夢のごとくうつつのごとく、何一つ判然はっきりとは想い出すことさえもできぬからなのです。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
但し、への字なりに強情らしく引結んだ唇は、何か磅礴ぼうはくたる気宇を示すように見える。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
と同時に一瞬間、おごそかな権威のひらめきが彼のみにくい眉目の間に磅礴ぼうはくしたように思われた。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
判り易くいえば土方の棒頭ふうな磅礴ぼうはくたる気宇を持ち、容易に転位せぬ代りに、一旦意気に感じたらその者のためには真実水火も辞せぬというような無益な感激性に富んでいるのである。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)