石南花しゃくなげ)” の例文
岩の上には処どころ石南花しゃくなげ真紅しんくの花が咲いていた。谷の上に見える狭い空にはひる近い暑いがぎらぎらしていたが、谷底は秋のように冷びえしていた。
岩魚の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
庭には桜、石南花しゃくなげなども有った。林檎りんごは軒先に近くて、その葉の影が部屋から外部そとを静かにして見せた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あるいは恒雪線スノウ・ラインにそい、あるいはすこし下って、一万フィートあたりの石南花しゃくなげ帯をゆく。巨峰、鋸歯状の尾根が層雲をぬき、峡谷は濃霧にみち、電光がきらめく。そして、ひょう、石のような雨。
人外魔境:03 天母峰 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)