くら)” の例文
初夏の村に、さくらんぼうの村に、思いくらむということはない。すべてはこの果実の味のようにさわやかに軽く消えている。
さくらんぼ (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
さう思ふと、生きてゐた時、その時、その場の恋をした女達、わかれた後忘れてしまつた女達に、また逢ふことの出来るのはくらいあの世のさむしい河のほとりであるやうな気がしてくる。
雪の日 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
そう思うと、生きていた時、その時、その場の恋をした女たち、わかれた後忘れてしまった女たちに、また逢うことの出来るのはくらいあの世のさむしい河のほとりであるような気がしてくる。
雪の日 (新字新仮名) / 永井荷風(著)