ひら)” の例文
その眼は強く広くひらかれていたが、眼前にかくも怖ろしいものがあるにもかかわらず、いつものように病的な、膜までかかったような暗さは見られなかった。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
知らせもしないのに、今日来るのを知って、出迎でむかえに出たと云って、手にすがって、あつい涙で泣きました。今度は、すずしい目をひらいても、露のみあふれて、私の顔は見えない。……
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
両眼もひらいているが、活気なくものうそうに濁っていて、表情にも緊張がなく、それに、下あごだけが開いているところと云い、どことなく悪心おしんとでも云ったら当るかもしれない
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
夫人はここにおいてぱっちりと眼をひらけり。気もたしかになりけん、声はりんとして
外科室 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)