直下じか)” の例文
眉深まぶかに鳥打帽をかぶっても、三日月形みかづきがたひさしでは頬から下をどうする事もできないので、直下じかりつけられる所は痛いくらいほてる。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
空はここも海辺かいへんと同じように曇っていた。不規則に濃淡を乱した雲が幾重いくえにも二人の頭の上をおおって、日を直下じかに受けるよりは蒸し熱かった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼女の顔は、昨夕ゆうべと反対に、津田の知っている平生の彼女よりも少しあかかった。しかしそれは強い秋の光線を直下じかに受ける生理作用の結果とも解釈された。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「兄さんにはかえってお前から直下じかに話した方が好いかも知れないよ。なまじ、御父さんや御母さんから取次ぐと、かえって感情を害するかも知れないからね」
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それに千代子が帰って母だけになりさえすれば、彼の話は遠慮なくできるのだからとも考えた。しかし実を云うと、僕は千代子の口から直下じかに高木の事を聞きたかったのである。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)