瘋癲院ふうてんいん)” の例文
彼は構わずできるだけの力を文鎮に込めて、細君の見ている前で、最愛の夫を打ち殺した。そうして狂人の名のもとに、瘋癲院ふうてんいんに送られた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
孰れの家にも随分家名に障る様な家族は有る者で、公の養育院や瘋癲院ふうてんいんなどへは入れ兼ねる場合に医者に頼むのです。
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
さういふ事があつてのち、間もなく、此の家の主婦は縊死を遂げ、その倅は、瘋癲院ふうてんいんへ送られてしまつた。
その中で多少理窟りくつがわかって、分別のある奴はかえって邪魔になるから、瘋癲院ふうてんいんというものを作って、ここへ押し込めて出られないようにするのではないかしらん。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
迷亭の記述が棒大のざれ言にもせよ、彼が瘋癲院ふうてんいん中に盛名をほしいままにして天道の主宰をもってみずから任ずるは恐らく事実であろう。こう云う自分もことによると少々ござっているかも知れない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)