産飯サバ)” の例文
実の処、年暦の改まる時に奉つたものは、魂であつたので、さば——産飯サバと書きなれてゐる所の——といふ語で表す様になつたのには、聯想の、他から加つて来たものと考へる。
たなばたと盆祭りと (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
「さば」は産飯サバで、魚の鯖ではない。神棚に上げる盛り飯の頭をはねて、地べたなどへ散したりする。頭だから「あたまをはねる」との同義で、さばはねを加へて勘定する事である。
若水の話 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
大殿祭祝詞註の所謂、室清めの産飯サバ説も、葺草壁代の霊とする説も、尚合理臭い。此神の子として、若室葛根ツナネ神(記)の名を伝へて居るのは、寧、御饌神ミケツカミ即厨の神とする説の方がよい。
其にしても、何故サバを携へて行くのかは、訣らない。一体、神に捧げる食物と、精霊に捧げる食物とは異つてゐて、精霊に捧げるのを産飯サバと言ふが、其語が鯖に考へられたのではなからうか。
鬼の話 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)