猅々ひひ)” の例文
ただ深更に及んでその啼声なきごえじゃね、これを聞くと百獣ことごとく声を潜むる。鳥がねぐらで騒ぐ。昔の猅々ひひじゃと云う。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小半次は自分の罪のつぐなひに、人身御供を助けて猅々ひひを退治した氣でゐるんだらう。——が人を殺して變な細工をしたから、三輪の親分に地獄の底までも追つかけられるのだ
金札きんさつ打った独武者ひとりむしゃ、羅生門よし、土蜘蛛よし、猅々ひひ、狼ももって来なで、萌黄もえぎ緋縅ひおどし、卯の花縅、小桜を黄に返したる年増交りに、十有余人の郎党を、象牙のばちに従えながら
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
素的だ、化物退治にそんな筋のがあるぜ、——血の跡を慕つて行くと、洞穴ほらあなの中に、猅々ひひこふを經たのが、手傷を受けて唸つて居たとね——ところが、こいつはそんな都合には行かないよ。
どんな事をしても、娘の清らかさは、そんな猅々ひひ野郎には汚させられない。