狭隘せま)” の例文
旧字:狹隘
町が狭隘せまいせいか、犬まで大きく見える。町の屋根の上には、天幕がゆれていて、さくらかんざしを差したむすめ達がゾロゾロ歩いていた。
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
城内の街の狭隘せまさは、二人並んで歩くことさえ出来ぬ。凸凹の激しいその道には豚血牛脂流れ出しほとんど小溝をなしている。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
下町の道路は狭隘せまく、飛び/\に立っている街燈が覚束おぼつかない光を敷石の上に投げていた。夕暮が永かった割に、日が暮れると急に夜がけたように、人通りが稀になった。
緑衣の女 (新字新仮名) / 松本泰(著)
鉄柵をめぐらした方園スクエアの樹木が闇の中に黒々と浮上っている。傾きかかった路傍の街燈が、音をたてて燃えていた。坂口の歩いてゆく狭隘せまい行手の歩道は、凹凸が烈しかった。
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)