物語はなし)” の例文
物語はなしの中から今回の事件に就て何等かの端緒を掴もうとしてか、にわかにその顔を憂鬱にし眼から光を失わせたまま、物も云わずに考え込んだ。
喇嘛の行衛 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これは、ガデャーチからよくやつて来たステパン・イワーノヸッチ・クーロチカに聞いた物語はなしぢやが、これには一つの故事来歴がついてゐる。
されど物語はなしたねはさまで多からず、牛の事、牛乳ちちの事、花客先とくいさきのうわさなどに過ぎざりき。
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
我れながら、それを百も承知なので、わざわざ彼にその物語はなしを帳面へ書きつけておいて呉れるやうに頼んだ次第ぢや。
十兵衛の娘お種を助け、長庵の悪事をあばくという、義血侠血の物語はなしもあるが、後日を待って語ることとしよう。
村井長庵記名の傘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
人のいい優しい、そして勇気のある剛胆な、義理の堅い情け深い、そして気の毒な義父おとっさんくなってから十三年忌に今年が当たる、って紀念のために少年こどもの時の鹿狩りの物語はなしをしました。
鹿狩り (新字新仮名) / 国木田独歩(著)