片笑靨かたえくぼ)” の例文
その下萌したもえの片笑靨かたえくぼのわずかに見えたる、情を含む眼のさりとも知らず動きたる、たおやかなる風采ものごしのさらに見過ごしがてなる、ああ、辰弥はしばし動き得ず。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
片笑靨かたえくぼでそう云うとすぐおかみさんの姿は、鳥居うち宵闇よいやみの人影にまぎれてしまった。
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
のッけから高氏は、つい揶揄やゆろうしてしまった。小右京のことが胸に生々なまなまあったからだった。しかし道誉はまだ何も知ってはいない。高氏の揶揄をただ親しみと片笑靨かたえくぼでうけている。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)