熨斗袋のしぶくろ)” の例文
「木下さん。困りますよ。」そう言って、例の熨斗袋のしぶくろふところから出したのである。「これは、いただけません。」
彼は昔の彼ならず (新字新仮名) / 太宰治(著)
御作さんは用箪笥ようだんす抽出ひきだしから小さい熨斗袋のしぶくろを出して、中へ銀貨を入れて、持って出た。旦那は口がけないものだから、黙って、袋を受取って格子こうしまたいだ。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
母は、その紙幣を母の大きい財布にいれて、そうしてその財布の中から熨斗袋のしぶくろを取り出し、私に寄こした。
帰去来 (新字新仮名) / 太宰治(著)
マダムはお辞儀をしてから、青扇にかくすようにして大型の熨斗袋のしぶくろをそっと玄関の式台にのせ、おしるしに、とひくいがきっぱりした語調で言った。それからもいちどゆっくりお辞儀をしたのである。
彼は昔の彼ならず (新字新仮名) / 太宰治(著)