火繩ひなわ)” の例文
新字:火縄
夜のうちにとらの目のごとくひらめく火繩ひなわは、彼らの頭のまわりに円を描き、イギリスの砲列のすべての火繩桿ひなわかんは大砲に近づけられた。
やがて対岸のやみに、ポチと、ほたる火ほどな火繩ひなわが見え、その火繩は暗に何か、描くように、しきりと赤い線を振っています。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新保宿にある武田の本営では入り口にさくを結いめぐらし、やり大砲を備え、三百人の銃手がおのおの火繩ひなわを消し、一礼してこの甚七郎を迎え入れた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
荒い笹刈ささがりにはぶよ藪蚊やぶかを防ぐための火繩ひなわを要し、それも恵那山のすその谷間の方へ一里も二里もの山道を踏まねばならないほど骨の折れる土地柄であるが、多くのものはそれすらいとわなかった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
火のついた火繩ひなわの煙が見えていた。