濁世だくせ)” の例文
この人と、この人をつ時世とを見て泣いた時から、子路の心は決っている。濁世だくせのあるゆる侵害しんがいからこの人を守るたてとなること。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
滔々とうとう濁世だくせのとき、予は若き傷心を抱き、襄陽じょうようの郊外に屈居して、時あらん日を天に信じ、黙々、書を読み、田を耕しつつあったことは、さきに汝がいった通りにちがいない。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とて、微笑を含みて読みもてゆく、心は大滝おほだきにあたりて濁世だくせあかを流さんとせし、それの上人がためしにも同じく、恋人が涙の文字もんじ幾筋いくすぢの滝のほとばしりにも似て、気や失なはん、心弱き女子をなごならば。
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)