みづたまり)” の例文
此處は恰度曠野の中央まんなかで、曠野の三方から來る三條の路が、此處に落合つてゐる。落合つた所が、稍廣く草の生えぬ赤土を露はしてゐて、中央に一つみづたまりがある。
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
……そらをうつしたみづたまり……
春と修羅 第二集 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
と、犬の𢌞り方が少し遲くなつたと思ふと、よろよろと行つて、みづたまりの中に仆れた。旅人は棒の如く立つた。
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
昨日の雨の名残のみづたまりが路の処々に行く人の姿々を映して居るが、空は手掌てのひら程の雲もなく美しく晴れ渡つて、透明な空気を岩山の上の秋陽あきのひがホカ/\と温めて居た。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
と氣のついた時は、此曠野あらのに踏込んでから、もう彼是十哩も歩いてゐた。朝に旅籠屋を立つてから七八哩の間はみづたまりに馬の足痕の新しい路を、森から野、野から森、二三度人にも邂逅でつくわした。
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)