漣漪れんい)” の例文
から/\と引き出せば後にまた御機嫌ようの声々あまり悪からぬものなり。見返る門柳監獄の壁にかくれて流れる水に漣漪れんい動く。
東上記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
模様があまり細か過ぎるので一寸ちょっと見ると只不規則の漣漪れんいが、はだに答えぬ程の微風に、数え難きしわを寄する如くである。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
雨催あまもよいの空濁江に映りて、堤下の杭に漣漪れんい寄するも、蘆荻ろてきの声静かなりし昔の様尋ぬるに由なく、渡番小屋わたしばんごやにペンキ塗の広告看板かゝりてはみの打ち払う風流も似合うべくもあらず。
半日ある記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
何の祝宴か磯辺の水楼に紅燈山形につるして絃歌湧き、沖に上ぐる花火夕闇の空に声なし。洲崎の灯影長うして江水漣漪れんい清く、電燈こうとして列車長きプラットフォームに入れば吐き出す人波。
東上記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)