滔々たうたう)” の例文
流石さすがにその非凡な力を認めない訳に行かなかつたのは、この滔々たうたうたる氏の雄弁である。
あの頃の自分の事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
然し乍ら、この驚くべき一文を胸轟かせて読み終つた自分は、決して左様は感じなんだ。敢て問ふ、世上滔々たうたうたる浮華虚礼の影が、此手紙の何の隅に微塵たりとも隠れて居るか。⦅一金三両也。馬代。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「実にしからんですな。」と書生の憤慨に賛成の意をへうした。書生は自分の賛成を得ておほい知己ちきを得たやうな気がしたのだらう。彼は自分のはうをふりむくと、滔々たうたうとしてこんな事を辯じ出した。
饒舌 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
益軒はかつて乗合船の中に一人の書生と一しよになつた。書生は才力に誇つてゐたと見え、滔々たうたうと古今の学芸を論じた。が、益軒は一言も加へず、静かに傾聴するばかりだつた。その内に船は岸に泊した。
侏儒の言葉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)