渋紙しぶがみ)” の例文
旧字:澁紙
骸骨を渋紙しぶがみで貼り固めてワニスで塗上げたような黒いガッチリした凸額おでこの下に、硝子球ガラスだまじみたギョロギョロする眼玉が二つコビリ付いている。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
松蔵は膝に双手もろてを置いたまま、ボロボロと涙をこぼすのです。日光と土とに荒らされた、渋紙しぶがみ色の頬を伝わって、その涙は胸から膝小僧まで落ちるのです。
おりおりせみの声が向いの家の糸車の音にまじる。六日は日曜日で、石田のところへも暑中見舞の客が沢山来た。初め世帯を持つときに、渋紙しぶがみのようなものでこしらえた座布団を三枚買った。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
そこは三畳ばかりの板敷の納戸で、床板には何の変りもありませんが、隅に片寄せた渋紙しぶがみをほぐすと、往来や、庭にあったような土が、ザラザラするほど畳込んであります。
渋紙しぶがみ色の顔をした、しなびたじいさんである。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)