浪漫ろうまん)” の例文
「おやおや! またあなた方の、古典主義だ浪漫ろうまん主義だという議論が、始まるのね」と、またもやジナイーダは彼を遮った。——
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
もっと具体的に言えば、氏はその幾分浪漫ろうまん的な感情を満足させるような景色でなければ描く気にならないのではないか。
院展日本画所感 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
一つはこの人の持っている新浪漫ろうまん主義が、激しい文壇の思想の動きから、おき去りにされたせいもあったでしょう。
死体の上に一面にかれたしおらしい野菊の花、送葬曲の様な物悲しい横笛フリュートの音、何から何まで古風で、浪漫ろうまん的で、しかも云うばかりなく怪奇なのだ。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
後年マタ・アリとしての活躍の素地は、このインド時代に築かれたものだ。自伝では、ここのところをちょっと浪漫ろうまん化して、神前に巫女みこを勤めたなどと言っている。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
そしてこの臆測おくそくは、蕪村の俳句や長詩に見られる、その超時代的の珍しい新感覚——それは現代の新しい詩の精神にも共通している——を考え、一方にまた近代の浪漫ろうまん詩人や明治の新体詩人やが
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)