洟水はなみず)” の例文
洟水はなみずがあふれてシャクリあげた。シャクリあげる声というものは、この年になっても、ガキのころと同じであった。なんたる宿命であるか。恐怖にふるえた。
現代忍術伝 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
そして彼らもまた、おいおいと手放しで泣き、洟水はなみずをすすりあい、そして遥かに筑波の山影を望んで
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あれからズーッと平次のところにいる友吉爺やは洟水はなみずと涙とを一緒になで上げます。
中年をすぎたこのうらぶれた棟梁とうりょうは、手の甲で洟水はなみずをグッと抑えた。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
洟水はなみずをすすりあげている。やがて、顔をあげた。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
洟水はなみずをすすり心を捨てきる
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
あげくに五寸もある洟水はなみずがぶらりぶらりと垂れてきたのを、手でつらゝをもぐやうに握りしめたが、こゝまできては古典芸術の修練も如何とも施す術がないやうだ。
母の上京 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)